そこへ、2人の使用人も駆けつける。


「あなたたち、一体なにをしていたの!さっさと廊下を片付けてちょうだい」

「は…はい!」

「すぐに!」


使用人たちは箒と塵取りを持ってくると、割れた鏡の破片を掃除する。

丸い鏡の部分が抜け落ちた朱色の漆で塗られた木の枠もいっしょに箒の中に巻き込まれる。


「…待って!それは…!」


慌てて拾い上げようとする和葉。

しかし、そばにあった鏡の破片に触れてしまう。


「……っ…!」


反射的に手を引っ込めたが、和葉の右手の人差し指の指先からは赤い血が流れていた。


「和葉お嬢様、大丈夫ですか…!」

「だ…大丈夫です。少し切れただけです…」

「すぐに包帯をお持ちしますので、少々お待ちください!」


和葉のケガに慌てる使用人たち。

その様子を八重は冷めた目で見下ろしていた。