そう言い放つと、貴一は白目をむき出しにして失神寸前の草刈家当主に背を向ける。


「ま…待ってぐれ…!!オレが間違っていた…。今すぐここから去るから゙っ…、は…早ぐこの術を゙――」


地を這いつくばって命乞いをする草刈家当主に、振り返った貴一はため息をつく。


「…まったく。こんな簡単な呪術でさえも解けんとは、ここに集まる呪術師の格も落ちたものだな」


貴一が、伸ばした右腕を風を切るようにスッと横へ払うと、術が解けた草刈家当主はゼェゼェと荒い呼吸を何度も繰り返す。


周りで傍観していた呪術師たちは、唖然とした顔を見つめている。


「さ…さすが黒百合家」

「あれが、300年続く…神導位の力」

「自力で解けって言ったって、今のって…高難易度の『負の呪術』だよな…?」

「あんな圧のこもった術、解けるわけねぇよ…!」