これまでの絶対的な信頼を失くし、呪術で財をなすことができない2つの呪術家系は、衰退の一途をたどるしかなかった。



和葉と玻玖は静かな田舎に越してきて、そこでこぢんまりとした家で夫婦仲よく暮らしていた。


そして、その家にはもう1人住んでいる。


それは、顔全体を覆う狐の面をつけた――。

そう、菊代だ。


和葉はあとから聞かされたのだが、驚いたことに菊代は人間ではなかった。


家族のいない玻玖が、枯れ葉に妖術を込めて作り出した人型の幻術だった。

つまり、東雲家の屋敷にいた使用人すべてが幻術。


とくに菊代は、300年も前からずっと玻玖のそばに仕えてきた。

玻玖が瞳子といっしょに亡くなってからもずっと、代わりに東雲の屋敷を守り続けてきた。


玻玖が持っていた瞳子の写真も、玻玖が転生してくるまでの間、菊代が300年間大事に持っていたのだった。