ゆっくりとうなずく和葉。

その瞬間、玻玖の擬獣化は解け、みるみるうちに擬人化の姿へと変わっていく。


「和葉…。本当に…和葉なのか…?」

「なにをそんなに驚かれているのですか…。…もうお忘れですか…玻玖様」


そう言って、柔らかく微笑む和葉。

それを見た玻玖の瞳に光が戻る。


「和葉…!!」


両腕を精一杯和葉の背中にまわし、強く強く抱きしめた。


「は…玻玖様…、あまりにも強く抱きしめられては…痛いです…」


玻玖ははっして目を向けると、和葉は腹部を抑えていた。


「す…すまない!それにしても…、腹の傷は……」

「このおかげで、命拾いいたしました」


そうして和葉が帯から取り出したのは、鏡の部分が抜け落ちた朱色の漆で塗られた手鏡の枠。

その表面の花の絵の部分には、大きな刀傷がついていた。