「和葉…。まさか、お前……」


にわかには信じられなかった。

なぜなら、呪術の力を持たないあの和葉が――。


「和葉、落ち着け!俺なら大丈夫だ!…ここにいる!」


必死に和葉をなだめようとする玻玖の姿を見て、貴一は確信した。


――和葉には、『森羅万象ノ術』が宿っているのだと。


「…まったく。お前は聞き分けのいい子だったというのに、いつから親も手がつけられないような子に育ってしまったというのだ」


貴一は重いため息をつくと、空に舞い上げられていた短刀にもう一度を呪術をかける。


狙いは、玻玖――。

ではなく、その切っ先は和葉に向けられていた。


これ以上暴走しないようにと、和葉を必死に落ち着かせようとする玻玖は…気づいていない。


空を切り、矢の如く飛んでくる短刀の存在に。