その声に、貴一は気づいていない。


「それでは、さらばだ。東雲玻玖よ、永遠に眠れ!」


貴一が腕を振り下ろすと、宙に浮いていた短刀が勢いよく玻玖目がけて飛んでいく。

玻玖は未だに、呪術の縛りから逃れられていない。


絶体絶命。

玻玖は、死を覚悟した。


――その瞬間。


「…やめてーーーー!!!!」


和葉の叫び声が響き渡り、それと同時に突風が吹き荒れる。

風は貴一の短刀を弾き飛ばし、天高く追いやる。


明るく照らしていた満月は黒雲によって覆われ、空を漆黒に染めていく。


次々と落雷が発生し、突然の奇妙な自然現象に周りの呪術師たちは恐怖を感じる。


「…なんだなんだ!?」

「さっきまで晴れていたっていうのに…!」


慌てふためく呪術師たち。


そんな中、呆然として和葉を一直線に見つめるのは貴一だった。