「へへへ!大人数で縛れば、さすがの妖狐も術は解けまい!」

「黒百合の旦那ぁ!さっさと今のうちに!」

「ああ、そうだな」


貴一は呪術で宙に浮かぶ短刀を操ると、玻玖に狙いを定める。


玻玖は全身にかけられている呪術の縛りを解こうとするが、複数人で呪術を加えておりまったく解ける気配がない。


「…旦那様!!」

「和葉…くるな!!ここから離れろ!お前を遠くへ逃がすだけの体力ならまだ残っている」

「…ですが!そんなことをしたら、旦那様はここからどうやって――」

「俺のことなどどうでもいい!お前さえ助かれば…!!」


玻玖はなんとか力を振り絞り、和葉に体当たりをして突き飛ばす。


「早く行け!!…俺にかまうな!!」


そうまでして、玻玖は命をかけて和葉をここから逃がそうとしていた。