しかし、和葉は黒百合とは縁を切り、玻玖があやかしであれば、黒百合家が再び神導位に返り咲くことはもはや絶望的。


乙葉と清次郎の結婚に、なんのメリットもなかった。


そこで貴一から、玻玖がいなくなればすべてがうまくいくと言われ――。

この奇襲作戦に乗ることにした。


黒百合家や蛭間家に昔から恩のある呪術家系も取り込んで、あやかしの力が弱まる満月の夜を狙って、こうして一気に仕掛けにきたのだった。


神導位を外されてから、貴一はそのことばかりに執着し、変わってしまったと思っていた和葉。


それがまさか、このような強硬手段に出るとは思いもしなかった。


「…黒百合さん。これはなんとも…負の呪術を使いたい放題ですね。今までは目をつむっていましたが、さすがに今回は見過ごせません」

「ほう。帝に報告するつもりか?できるものならやってみろ。…ただし、生きていられたらの話だがな」