和葉の父、黒百合貴一だったからだ。


「お父様…!なんてことを…!!」

「ええい…黙れっ!元はと言えば和葉、お前が言いつけを守れなかったせいだからだろう!」


和葉と玻玖を殺意のこもった目で睨みつける貴一。


乙葉が『空渡ノ術』で黒百合家に帰されたとき、貴一は重大な真実を聞かされることに。

玻玖の正体が妖狐であると。


妖術を扱うあやかしが相手では、どれだけ高度の呪術を取得しようと、呪披の儀で勝てるわけがない。

このままでは、神導位の座を取り戻すどころか、玻玖すら殺すこともできない。


和葉にかけた『言ノ葉ノ術』も解かれてしまい、玻玖を暗殺できる駒もいない。


焦った貴一は、ある話を蛭間家へと持ちかける。


それは、東雲家への奇襲。


蛭間家も多少なりとも、親戚同士間での神導位の恩恵を受けられると思い、和葉を姉に持つ乙葉との婚約を決めた。