一直線に飛んできたなにかは、そのまま屋敷の柱に突き刺さる。

見ると、それは短刀だった。


「…和葉、無事か」

「は…はい」


そう言って、体を起こした和葉はぎょっとした。


なんと、玻玖の右腕から血が流れていたのだ。

さっきの短刀が玻玖の腕をかすめていた。


突き刺さったままの短刀は、まるでなにかに操られているかのようにひとりでに柱から抜けると、宙を舞いながら再びその切っ先を玻玖へと向けた。


和葉は、背筋が凍った。

なぜなら、その短刀には見覚えがあったから。


「さすが、化け狐。しぶといやつだ」


大きな満月を背にして、だれかが歩み寄ってくる。


「どう…して……」


それを見て、和葉は言葉を失った。


なぜなら、大勢の呪術師たちを率いて東雲家の屋敷へ攻め込んできたのは――。