ただ、神導位から外されたといっても、世に知られた先祖の代から培われてきた歴史と信頼はそう簡単に揺らぐものではない。

帝の支援金がなくとも、これまでと変わらない十分な財をなしていた。


しかし、黒百合家当主である貴一は心の奥底では新たな神導位への嫉妬の念が沸々と湧き上がっていた。

そして、『神導位』という地位があってこその黒百合家に嫁いだ八重もまた、ただの呪術家系に成り下がってしまったことへの恨みを新たな神導位に密かに向けていた。


この2人の腹の底で煮えたぎる黒い炎がのちに、儚くも懸命に生きる和葉を巻き込む事件へと発展するのであった。