しかし、こんなに燃え盛る炎を前にしては、玻玖は面を取るに取れなかった。


「なんだ、神導位といってもたいしたことないな!」

「これなら、数で押し通せる!」

「満月になると妖術が弱まるという話は本当だったんだな!“あの人”の話に乗ってよかったぜ」


攻めてきた呪術師たちからは、そんな声が聞こえる。

やはり、だれかに手引きされてここへ乗り込んできたようだ。


和葉に駆け寄る玻玖。


「和葉!ケガはないか…!?」

「…わたしは大丈夫です!ですが、菊代さんがわたしを守るために…今……」

「…そうか。菊代が逃がしてくれたんだな」


和葉にそう告げる玻玖の背後で、なにかがキラリと鈍く光る。

そして、玻玖の背中目がけてものすごい速さで飛んできた。


「旦那様!…危ない!!」


それに気づいた和葉が声を上げると、玻玖は和葉を抱きかかえたまま横向きに転がった。