『擬獣化』は、読んで字の如く『獣』。

『擬獣化』は凶暴性が増し、妖狐の玻玖が擬獣化の姿になれば、手がつけられないほどの脅威となる。


意識があるうちはいいが、もしなにかの拍子に我を忘れて暴れるようなことがあれば、多くの人を巻き込む災害となってしまう。


そうならないように、玻玖は狐の面に力を押さえる呪術をかけたのだ。


そんなあやかしだが、その妖術が弱まる特別なときが存在する。

それが、満月の夜。


だから玻玖は、満月の夜にだけ面を取る。


和葉にとっては、美しい玻玖の顔を拝める唯一の日であるため、和葉は満月の夜を楽しみにしていたのだった。


「それにしても、今日の満月は本当に大きいな。まるで、飲み込まれそうだ」

「本当に。大きすぎて…こわいくらいです」


玻玖と和葉が見上げる満月は、まるで不敵に笑っているようにも見えた。