瞳子が死ぬとき、周りは炎に囲まれていた。

それからというもの、玻玖はたとえどんな小さな火だったとしても、直視できなくなっていた。


その火への恐怖が、面越しだと和らぐのだった。


しかし、面越しとはいえやはり火を見ると反射的に顔を背けてしまう。


以前、和葉が七輪でさんまを焼いていたとき――。


『菊代さんがさんまを買ってきてくださったので、七輪で塩焼きをと思いまして――』


一瞬七輪の中の炭から炎が上がっただけで、玻玖はその場にしゃがみ込んでしまった。


あのとき、菊代が七輪でさんまを焼くのを渋っていたのは、玻玖の炎への恐怖心を知っていたからだ。


そしてもう1つは、以前少し玻玖が和葉に話していたが、膨大な妖術の力を押さえる呪術が込められている。


あやかしには人と同じ姿になる『擬人化』のほかに、本来の姿である『擬獣化』がある。