――黒百合家が、300年間守り続けてきた神導位の座を外されたのだと。


それを決定づけるように、翌日の朝刊では大々的に見出しに掲載されていた。


【黒百合家、300年ノ歴史二幕。
新タナ神導位誕生】


黒百合家が神導位の座を譲ったことは、これまでの呪術の歴史においてもまるで天と地がひっくり返ったような出来事で、世間に衝撃を与えた。


貴一自身も、この結果は予想だにしなかったことだろう。

世にも珍しい『予知眼ノ術』を持つ乙葉がいたというのに。


呪披の儀でなにがあったのかは、貴一、八重、乙葉の3人しか知らず、和葉に知らされることはなかった。


その後しばらくの間は、使用人たちの間では呪披の儀に関する話は禁句に。

そして、とくに八重への対応は、これまで以上に使用人たちの神経をすり減らすこととなった。