おそらくそれは、妖狐の玻玖にしか使えないであろう禁忌に触れる呪術――。

その名も、『輪廻転生ノ術(りんねてんせいのじゅつ)』。


転生後の寿命を半分削るという代償として、再び前世の記憶を持ったまま生まれ変わることができる呪術。


『もし生まれ変わることができるのなら…、わたしは来世でも…こうして玻玖様と結ばれとうございます…』


瞳子の言葉を叶えるため。

再び瞳子と出会うため。


玻玖は自ら、瞳子といっしょにここで死ぬ運命を選んだのだ。


翌日。

昨夜の嵐がまるで嘘かのように、雲ひとつない青空が広がっていた。


黒百合家は、離れたところにあった着物蔵だけを残して屋敷は全焼。


当主の冬貴は火事に気づいて避難したが、娘の瞳子は今も行方不明。

激しい炎がすべてを焼き尽くし遺体は見つからなかったが、おそらく瞳子は逃げ遅れて火事の巻き添えにあったのであろう。