もう開くことないその瞳。


「…瞳子、…瞳子…、……瞳子!!」


烈火の中に響き渡る、玻玖の悲痛な叫び声。


力なく横たわる瞳子の体を玻玖は抱きしめ続けた。

頬に顔を擦り寄せ、強く強く抱きしめる。


そのとき、瞳子の中に残った最後のわずかな記憶が玻玖の中へと流れ込む。


『森羅万象ノ術』をまだ思うままに操れない瞳子に対して、2人がかりで襲いかかる冬貴と貴臣。

その後ろで、まるで獰猛な獣でも見るような目で瞳子を恐れる中年の女。


死闘の末、貴臣の呪術で縛った瞳子の腹部に冬貴が刀を突き刺したのが致命傷となった。


玻玖なら、今からでも瞳子の死に関わった3人を殺すこともできた。


――しかし。


『東雲様は人を殺めるようなお方には見えなかったので』


瞳子の笑った顔が目に浮かぶ。