炎に囲まれた部屋の中央で、血に濡れた着物をまとった変わり果てた瞳子の姿を。


「…瞳子!!…瞳子!!」


玻玖は瞳子を抱き起こすと、何度も何度も名前を叫び続けた。


すると、少しだけ瞳子がまぶたを開けた。


「…ああ。玻玖様…きてくださったのですね……」

「瞳子…!…これは――いや、今はそんなことはどうだっていい…!すぐに治すから安心しろ!」


玻玖は『治癒ノ術』で、出血する瞳子の腹部へ手をやる。

しかし、その手を瞳子が握る。


「…もう無駄です。…わたしは助かりません…」

「なにを言っている…!俺は神導位だぞ!治せぬものなど――」

「いいのです…。『森羅万象ノ術』を宿すわたしは……生きる価値などないのです…。人々を不幸にするだけ…」

「そんなことはない!それに……、少なくとも俺は幸せだった…!瞳子に出会ってから、ずっとずっと!」