すぐに、『森羅万象ノ術』が発動されたのだと悟った。

玻玖の背筋が一瞬にして凍る。


その瞬間、玻玖は東雲の屋敷を飛び出していた。


たどり着いた玻玖の目の前には、轟々と燃える黒百合家の屋敷。


「…瞳子!」


玻玖は、燃え盛る炎の中へと飛び込んだ。


未だに天候はこの場だけ荒れ狂い、それは術者である瞳子が生きているというなによりの証。


しかし、瞳子の気配を感じるのは猛火に包まれる屋敷の中から。

生きているのであれば、早く助け出さなければならない。


玻玖は心臓が握り潰されそうな思いで、瞳子を探した。


ところが、雷雲の隙間からわずかに月が見える。

雨風も次第に弱まり始める。


それは、瞳子の命の灯火が消えかかっていることを意味していた。


玻玖は無我夢中で探し、――そして見つけた。