父の冬貴には外に女がいて、それが母を殺したあの女。

しかも、瞳子と同じくらいの『貴臣』という子どもまでいた。


あの女は、新たな冬貴の妻になりたいがために。

息子の貴臣を黒百合家の次期当主にしたいがために。


そんなことのために、瞳子の母は殺された。



「……許さない」


満月は再び雲に隠れ、静まり返った闇夜に聞こえる――低い声。


「だれ…!?」


驚いて目を向ける女。

冬貴も同じく、驚きながらも身構えたが、そこにいたのが瞳子とわかり、構えていた腕を下ろす。


「…瞳子!?…いつからそこに……」

「お父様は、ずっとお母様とわたしを騙していたのね」

「な、なにを言って――」

「とぼけないでっ!!」


その瞬間、空がまるで昼間かと思うほど一瞬明るくなったかと思ったら、冬貴の足元に天から走った稲妻の矢が刺さる。