そのとき、様子を伺っていた瞳子の耳に、信じられないような会話が聞こえてくる。


「冬貴さん、いつまで待たせるおつもり!?約束は守ってちょうだい！」

「わ…わかっている！しかし、妻が死んですぐ、新しい妻を迎えたとなったら…体裁が悪いだろう」

「体裁もなにも、冬貴さんがおっしゃったのよ？『妻がいなくなれば、すぐにでもお前と結婚するのに』と。だからわたくしは、人斬りを雇ってあの女を――」


瞳子は息を呑んだ。


自身の腕前や刀の斬れ味を確かめるために無差別に人を襲う、人斬り。

人斬りと出会ってしまったら、運が悪かったとしか言いようがない。


瞳子は、悔しくもどうしようもない母の死を、この数ヶ月間そう自分に言い聞かせ続けてきた。


――だが、違った。


瞳子の母は無差別に狙われた中の１人ではなく、今冬貴の目の前にいる女が雇った人斬りによって殺されたのだ。