夜更けに、ふと目を覚ました瞳子。

母を亡くして以来、眠りが浅いということもあるが、なにやら外から声が聞こえたのだ。


「なぜきた…!?屋敷にはこない約束だっただろう!」


耳を澄ませると、それは父である冬貴の声。

屋敷の向こう側から聞こえる。


瞳子は羽織りを肩にかけ部屋を出ると、草履をはいてゆっくりと声がするほうへと歩いていった。


そして、屋敷の陰からそっと顔を覗かせる。


「…お父様――」


と小さくつぶやいて、すぐに口をつぐんだ。


ちょうど雲から顔を出した満月に照らされたのは、屋敷の庭で固まる3人の姿。


1人は冬貴。

あとの2人は、中年の女と瞳子と同じくらいの歳の青年だった。


見たこともない2人。


こんな夜更けに。

しかも、人目を忍ぶようにしてあんなところで…一体なにをしているのだろうか。