瞳子の後ろには残念がる父、冬貴の姿があったが、これまでの呪術師たちとは違い、将軍の目にとまったのは明らかだった。


「なぜ、手加減をした?」


手合わせ後、城の庭を散策していた瞳子に玻玖が声をかける。

桜色の着物によく映える腰まである美しい黒髪をなびかせながら、瞳子が振り返る。


「なにも、手加減などしておりません。わたしの力が及ばなかっただけです」

「そんなはずはない。そなたはまだ、…隠しているだろう」


玻玖の言葉に、瞳子が一瞬目を見開く。

そして、すぐに目を細めてフッと微笑む。


「…やはり、お気づきになられていましたか」

「当然だろう。内に秘めたる力が漏れ出ていたからな」

「…そうですか。この力は封じ込まれているはずなのに、わかる方にはわかるのですね」

「そのへんの呪術師には感じ取れなくとも、俺を騙すことなどできぬ」