頭を下げて、玻玖に感謝する和葉。

しかし、玻玖の口元を見ると、どうにもよくはなさそうな表情だった。


「旦那様、…どうかしましたか?」

「…いや。それと同時に、もう1つの『言ノ葉ノ術』も解けることとなった」

「もう1つの…『言ノ葉ノ術』?お父様は、2つもわたしにかけておられたのですか…?」

「違う。黒百合さんではない」

「それでは…」


玻玖は、『言ノ葉ノ術』は『高度な負の呪術』と言っていた。

そんな呪術がかけられる人間は限られているはず。


一体、だれが――。


「俺だ」


ふと、和葉の隣から聞こえた…そんな声。

見ると、そこにいるのは――もちろん玻玖。


和葉は呆然とする。


なぜなら、『言ノ葉ノ術』は相手の精神を乗っ取り支配する負の呪術。

そんな恐ろしい術を、なぜ…玻玖が……。