――『わかったな、和葉』。


こう言われれば、嫌でも体が貴一の言うとおりに勝手に動いた。

まさかそれが、長年にわたってかけられ続けていた呪いの言葉だったとは知らずに。


「わたしは…言いつけを守っていたのではなく、『守らされて』いたのですね…」


この歳になって初めて知らされた事実。


…落胆した。

しかし、不思議と涙は出てこなかった。


もう、家族から裏切られることなど慣れてしまったのだろうか。


――いや、そうではない。


どんなにつらい、悲しい出来事に見舞われようと、今の和葉にはそれをともに乗り越えてくれる存在がいるから。

和葉はもう1人ではないから。


「『無効化ノ術』で『言ノ葉ノ術』は解いておいた。だから、もう恐れることはない」

「ありがとうございます…旦那様」