玻玖は再び狐の面をつけ、和葉と夜更けの月を見上げる。


「この面には、妖狐の力を押さえる呪術が込められている。だから、特別なとき以外は外さないようにしている」


これまで玻玖は、恥ずかしがり屋だからなどと言って面を外したがらなかったが、本当はそういう理由があった。


そもそも、妖狐とは狐のあやかしのこと。

古くから日本各地では様々なあやかしの存在が確認されており、妖術を使い人の姿になりきり、人間生活の中へ溶け込んでいるとされている。


圧倒的な人間の数の中では、あやかしの存在は非常に珍しいが、知らず知らずのうちに擬人化したあやかしと接触していたとしても、なんら不思議なことではないのだ。


しかし、あやかしというだけで色眼鏡で見られることは多く、大半のあやかしは本来の姿を打ち明けずに人間として生きている。