「…土産？そんなもの、あるわけないでしょ!!」


八重は、他の使用人が運んでいた旅行用のボストンバッグを奪い取ると、その使用人に向けて思いきり投げつけた。

そして、苛立った様子を見せながら早足に屋敷の中へと入っていった。


噛みつくように激昂した八重の態度に、度肝を抜かれ唖然とする使用人たち。

和葉も目を丸くする。


八重に話しかけた使用人は、使用人の中でも八重に気に入られていたほうであったから、その者に八重が怒鳴るのは珍しかった。


「奥様…、どうされたのかしら。ご出発のときは、あんなに上機嫌でいらっしゃったのに…」


八重の後ろ姿を見届けながら、小声で話をする使用人。

すると、もう１人の使用人がはっとした顔で目を見開ける。


「…もしかして！神導位から外されたんじゃ…」