柔らかいなにかが肌に触れたと思ったら、それは白銀の毛をまとった太くて立派な尾。


和葉は、すぐにはなにが起こったのか理解できなかった。


「どうだ?驚いたか?」


そう言って、和葉に微笑みかける玻玖。


その笑みはいつもと変わらない玻玖だというのに――。

特徴的な大きな耳とふさふさの尾がつくと、それはもはや和葉がよく知る玻玖ではない。


…そう。

その姿はまるで、『狐』のようだった。


乙葉はというと、あまりの驚きように声も出ない。


「これが本来の俺の姿だ。あの娘のような反応をされるのではないかと思い、『妖狐』であることを隠してずっと和葉を騙してきた」

「旦那様が……『妖狐』…?」


ぽかんとして見つめる和葉を残し、玻玖はその場に立ち上がる。

そして、翡翠色の瞳で乙葉を捉える。