呪結式のときの『眠毒ノ術』は、早々に玻玖が解いた。

この前再びかけられそうになったときは、玻玖が部屋に乱入し免れた。


それなのに、いつ、どこで――。


――そのとき、2人の背後に足音が聞こえる。


そこにいたのは、息を切らせた乙葉だった。


「…ハァ…ハァ。東雲様、こんなところにいらしたのね」


歩み寄ろうとする乙葉に、まるで威嚇するように鋭い視線を向ける玻玖。


「どうやら、俺の術を解いたようだな。手加減していたとはいえ、さすが黒百合家が誇る娘だな」

「お褒めいただきうれしいわ。お姉ちゃんよりもわたくしのほうが魅力的だとわかっていただけたかしら?」

「…まったく、自信過剰な娘だ」


和葉の隣で、玻玖が疲れたようにつぶやく。


「そういえばさっき、俺のことをもっと知りたいと話していたな?和葉の知らないことまでもと」