短刀を持つ手が震え、その刃が和葉自身を傷つける。

和葉の白い首筋から滴る…一筋の赤い線。


「死んだほうがましだと…?それは俺が許さない」


玻玖は拳を握り、ゆっくりと和葉に歩み寄る。


「…和葉。お前が死ぬと言うのなら、俺もいっしょに死のう」


その言葉に、目を見開ける和葉。


「な…、なにをおっしゃるのですか…!それに、なぜそのようなことを――」


と和葉が言った瞬間、和葉の視界から突如として玻玖が消えた。

驚いた和葉だったが、そのすぐあと、背中にピタリとくっつくように背後に気配を感じた。


「当たり前だろ。和葉がいない世界なんて、生きている意味がないからな」


後ろから玻玖が包み込むようにして左腕で和葉を抱きしめ、右手で短刀を握る和葉の手首をやさしくつかんだ。


それは、あまりにも一瞬の出来事で。