貴一たちが帰ってくるまでの間、その言葉を励みにして待っていたというのに――。


続いて降りてきた八重も、やつれた顔をして不機嫌そうだった。

乙葉はというと、まるで逃げるように屋敷の中へと走っていった。


てっきり、満足げな表情の3人が車から降りてくるものとばかり思っていたから、想像していた様子とは違って思わず戸惑う使用人たち。


「奥様、おかえりなさいませ!今回の都でのご滞在、いかがでしたでしょうか」

「………」


八重の機嫌を取ろうと使用人が話しかけるが、八重はあからさまに無視をする。


「そういえば、出発の前におっしゃっていた都のお土産。奥様はいつもお洒落なお菓子を選ばれるので、私ども使用人はいつも楽しみにしておりまして――」


すると、八重は鬼の形相でその使用人を睨みつけた。