「そなた、今…なにをした」

「なにって、東雲様にわたしの初めての口づけを――」

「そうではない。…俺が動けないように、負の呪術で縛ったな?」


術を見破られ、舌をペロッと出しておどけてみせる乙葉。


「お姉ちゃんが大きな物音さえ立てなければ、東雲様は今ごろわたくしのものだったのに〜」

「あれくらいで集中力を切らして術が解けるようでは、まだまだだな」

「まあ、強がっていらっしゃるのね。わたくしに縛られていたというのに」

「…そうだな。俺としたことが油断した。そのせいで、和葉に変な誤解を与えてしまった」

「誤解じゃないわ。わたくしと東雲様の仲を見せつけてあげたのよ」


尚も、玻玖の寝間着の袖を引っ張って離さない乙葉。

玻玖は、そんな乙葉を力いっぱい振り払う。


「寝言は寝てから言え。俺は和葉を追う。そなたに付き合っている暇などない」