「まあ!そんな心配までしてくださって、東雲様はやはりやさしいお方なのね」


腕を振り払おうとする玻玖に対して、さらに抱きつく乙葉。


「でも、勘違いではないですの」


そう言って、乙葉は上目遣いで玻玖を見上げる。

少し頬を赤らめて、目元を潤ませて。


「この前偶然にも、満月の夜に東雲様のお顔を拝見致しました。とてもお美しい素顔でいらっしゃって、わたくし…思わず胸がときめいてしまって」


恥ずかしそうに、胸に手を当てる乙葉。


「これが…『一目惚れ』というものであると、初めて知りましたの。その日から、東雲様のことが頭から離れなくなってしまって…」


そう語る乙葉の表情は義妹ではなく、完全に1人の恋する乙女になっていた。


「なにも、お姉ちゃんと別れてほしいとは言いません。でも、わたくしは東雲様のことをもっともっと知りたいのです。お姉ちゃんが知らないことまでも…すべて」