だが、生きている限り、貴一の言葉が和葉の心を支配する。


玻玖に愛され、幸せだった。

玻玖と歩む先の人生を楽しみにしていた。


少しだけの間だったが、溢れんばかりの愛をくれた玻玖には感謝しかない。


そうして、和葉は考えついた。


玻玖を殺せないのなら――。


『お前の命をもって償え』


自分が死のうと。


和葉は、懐から短刀を取り出す。

鞘から引き抜くと、月明かりに反射して白く光って見える鋭い刃が現れた。


和葉は震える手で、その刃をそっと自分の首筋にあてがう。



わたしは、旦那様の幸せをいつまでも祈っております。

こんなわたしに、愛をくださりありがとうございました。


――そして、さようなら旦那様。