当初予定していた日より1日遅れはしたが、貴一たちは呪術の文で告げたとおりの日に戻ってきた。


「「おかえりなさいませ。旦那様、奥様、乙葉お嬢様」」 


屋敷の前に一列に並び、3人を出迎える使用人たち。

その列の一番端には、和葉の姿もあった。


ゆっくりと車から降りてくる貴一。

しかしその足取りは、どこか重たく見える。


「お父様、おかえりなさいませ」

「…ああ。和葉か…」


和葉は、ため息をつく貴一の斜め後ろをついて歩く。


「あのわたし…、お父様たちが留守の間、言いつけを守って家に――」

「悪いが、あとにしてくれないか。長旅で疲れているんだ」

「あ…。も…申し訳ございません」


和葉は怯えたように足を止め、貴一の背中を見送る。


…褒めてもらえなかった。


『言いつけを守って偉いな、和葉』