それとは逆に、和葉はだれに対しても思いやりのあるやさしい子だということは、黒百合家の使用人たちはみな知っていた。


和葉自身がそう言うものだから、使用人はその厚意に甘えることにし、和葉に調理を任せるのだった。


それから7日後。

今日の夕方ごろに、貴一たちが屋敷に戻ってくる予定となっている。


本来であれば、3日間で執り行われる呪披の儀。

それが、今年は急遽1日伸びたという連絡を2日前の呪披の儀最終日にあたる日に、貴一からの呪術の(ふみ)によって屋敷の使用人たちに知らされた。


呪披の儀が3日の間で終わらないのは、これまでに例がない。

なにかのトラブルだろうか。


しかし、電話もテレビもないこの時代に、遠く離れた場所の出来事をすぐに知るには、呪術師でない和葉や使用人たちにはそのすべがなかった。