「…ええ。といっても、一度だけだけど」

「うっそー!?それなら、わたくしも見てみたい!東雲様にお願いしてみようかしら」

「それはやめなさい…!きっとなにか理由があって、面をつけられているのだろうから」

「え〜…、つまんな〜い」


乙葉は口を尖らせて、頬をぷうっと膨らませる。


「それよりも東雲様、そろそろ夕食の時間だというのに、お帰りが遅いのね」

「そうね。最近よく外出されているけど、今日はとくに…」


和葉としては、何気なくつぶやいただけのつもりだった。

しかし、それを乙葉は聞き逃さなかった。


「もしかして、他に女の人がいらっしゃったりして…!」


和葉の反応を楽しむように、乙葉が意地悪く笑う。

それを聞いて、思わず和葉はうちわでさんまを扇ぐ手を止めてしまった。


「他に…女の人が……?」