和葉にとっては、乙葉の部屋の半分ほどの広さの自室が唯一、この家の中で安らげる場であった。


「それよりも、わたしになにかお手伝いできることはありませんか?」

「そんな…滅相もございません!使用人の仕事をお嬢様にさせていたと知られれば、(わたくし)どもがあとで奥様に叱られます…!」

「そんなことはないです。お母様は、乙葉であればお叱りになるでしょうけど、…わたしですから」


眉を下げて切なげに微笑む和葉。

使用人は、そんな自嘲する和葉に胸を痛め、(あわ)れみのまなざしで見つめる。


「それに、今はお母様もいらっしゃいません。知られる心配もありません。ですから、わたしにもお手伝いさせてください。なにもすることがないと、1日がとても長く感じてしまうので」


使用人をただの雑用係としてしか見ていない乙葉。