貴一と八重同様に和葉を虐げていた乙葉だが、それは親の背中を見て育ったから。

もし乙葉が違う親のもとに生まれていたのであれば、このような子にはなっていなかったのではと、和葉は姉なりに妹のことを心配していた。


「まあ、広いお部屋!」


その後、和葉は乙葉を余っている部屋へと案内する。


「この部屋を自由に使っていいと、旦那様がおっしゃってくださったから」

「ありがとう、お姉ちゃん。でもわたくし、ベッドじゃないとなかなか寝つけないのよね」


小言を漏らしながら、畳の上へ座る乙葉。


黒百合家は和モダンの造りで、貴一以外の家族の部屋は洋室のため、あまり乙葉は畳の上に布団を敷いて寝たことがなかった。


「ベッドがいいなら、実家へ帰ったらどう?」

「イヤよ!お父様とお母様の顔なんて見たくもないんだからっ」