「それじゃあ、神導位継続のお祝いも兼ねて、旦那様たちが戻られる日の夕飯は豪勢にしないと!」

「そうね!…あっ、和葉お嬢様!そろそろお屋敷にお戻りに」

「…はい。今行きます」


和葉は見えなくなった車を追うように、ふと屋敷の外に目を向ける。

それは、両親とうれしそうに出かけていった乙葉に対する羨望のまなざしであった。


しばらくして、なにかをあきらめたかのように目を伏せた和葉は、1人静かに自室にこもりにいった。


家の中に貴一たちがいないからといって、和葉の控えめな振る舞いは変わらなかった。


「和葉お嬢様。せっかくですから、居間でくつろがれてはいかがですか?」


自室に戻ろうと階段を上がる和葉に、使用人が声をかける。


「ありがとうございます。でも、いいんです。家族が集まる居間は、どこか落ち着かなくて…」