「こちらこそ、部外者が口を挟まないでいただきたい。…“黒百合”さん」


貴一はなにも言い返せず、下唇を噛む。


「帰ろうか、和葉」

「…はい」


玻玖の登場に安心したのか、和葉は気を失うようにして眠ってしまった。


「…さっきのはなに!?」

「ものすごい音がしたけど!」


眠っていたと思われていた八重と乙葉が、物音を聞きつけて慌ててやってきた。

そして、和葉の部屋から暗がりの廊下に出てきた玻玖に目を丸くする2人。


「し…東雲様…!?」


玻玖は目を合わせることもなく、和葉を抱きかかえて連れていく。


再び、玻玖の暗殺計画は破綻に終わった。

と思われたが――。


眠る和葉の着物の懐に、黒色の鞘に収まる短刀が仕込まれていることに、玻玖はまだ気づいていなかった。