「はい。和葉が安心して過ごしているようであれば、俺はここへきたことは告げずに帰るつもりでした。しかし、なにやら聞き流すことのできないお話が聞こえたもので」

「聞こえただと…!?一体、どこから!」

「地獄耳なもので。すみませんね」


自分の耳を指さしながら、玻玖は少しだけ口角を上げた。


「…フッ。たしかに、自分の暗殺計画ともなれば、聞き流すことはできんな」

「そこではありません」


玻玖はすぐさま否定する。


「貴一さんは、まだなにか仕掛けてくるとは思っていました。それが、『眠毒ノ術』を再び和葉の唇にかけるということは予想外でしたが」

「この前の比にならぬくらいの猛毒を仕掛けてやろうと思っていたのに」


玻玖に悪事がバレた貴一は、大人しく語り出す。

とはいっても、その表情はひどく悔しそうだ。