使用人たちは一斉に頭を下げ、貴一たちが乗る車を見送った。


車が見えなくなると、そのままにしていた仕事に取り掛かりに屋敷に戻る使用人たち。


「奥様、今回はなにを買ってきてくださるのかしら?」

「あたしは、前回の呪披の儀の際にお土産でいだいたものと同じものがいいわ〜」

「5年前の?なんだったかしら?」

「ほら〜!白くてふわふわした、ほんのりと甘いお菓子!…たしか名前は、まし…まし……」

「あ〜!“マシュマロ”じゃない?」

「そう、“マシュマロ”!初めての食感だったから、今でもあのおいしさが忘れられなくて!」

「そうね〜。黒百合家に仕えていないと、きっと口にすることなんてできないでしょうからね」


使用人たちは、ああだこうだと八重からの土産を期待する。

そういうこともあって5年に一度の呪披の儀は、使用人たちにとっても楽しみなイベントであった。