こんな和葉の意に反すること、和葉自身が受け入れるわけがなかった。


――しかし。


「わかったな、和葉」


どうしても、その言葉の前に逆らうことができない。


「は…はい、お父様…」


和葉は目に大粒の悔し涙を浮かべ、抗いながらもゆっくりとうなずいた。


貴一は和葉の返事を聞くと、満足そうににんまりと笑う。


「わかればよろしい」


貴一が背中を向けると急に体の力が抜け、その場に膝から倒れ込む和葉。


手を握ったり開いたりして、感覚を確かめる。

今はなんともないが、たしかにさっきは体が動かなかった。


あれは、一体――。


「…そうだ、和葉」


部屋から出ていくかと思いきや、和葉のほうを振り返る貴一。


「念のため、もう一度『眠毒ノ術』をかけておくか」

「な…なぜですか…」