「どうした、和葉。もちろん、タダでとは言わん。褒美だって――」

「そのようなものはいりません。前のときだって、わたしはお父様とお母様からただ褒められたいがために引き受けたのです…」

「…褒められたい?そんなことでいいのか?」

「はい…。わたしは、褒められることで愛を注がれていると思っていましたから」

「それなら、今回も――」

「しかし、愛に飢えていたわたしを愛で満たしてくださったのは…紛れもなく旦那様です!わたしにはもう、お父様たちからの愛などこれっぽっちも欲しておりません…!」


常に言いつけを守る便利な存在だった和葉。

それが東雲家へ嫁ぎ、しばらく会わない間になにかが変わったような。


――もう自分の思いどおりにはならない。


意志が揺らぐことのない和葉の力強いまなざしを見たら、悔しくも貴一はそう思わざるをえなかった。