しかも、娘の手を汚させるのかと。


和葉が今日ここへきてから貴一や八重の態度が明らかに柔らかくなっていたのも、また泊まらせることにしたのも、すべてはこの話をするため。


やはり和葉は、黒百合家の中では『家族』として思われてはいなかった。

和葉の『家族』は、今や東雲家だけだ。


「あとのことは心配するな。さすがに病死にすることはできんが、わしがうまくやってやる」


貴一はわかっていた。

和葉は断らないということが。


従順な和葉が、言いつけを守らないわけがないという絶対の自信があった。


――ところが。


「…できません、お父様」


和葉からぽつりと声が漏れた。


「…ん?なにか言ったか?」

「ですから…!!できませんと言っているのです!」


初めて見せる和葉の反抗的な態度に、貴一の目尻がピクリと動く。