「ほう。和葉も妻としての務めをはたしているのだな」

「…いえ。まだまだ、慣れないことばかりです」


和葉はどうにも落ち着かず、貴一から視線を逸らす。

なぜなら、貴一と2人だけの空間で話すことは初めてだったから。


聞かれたことを当たりさわりのない言葉で返すことくらいしかできない。


それに、暗殺失敗の話には触れてこないため、余計に貴一の真意がわからなかった。


「どうだ?東雲殿はよくしてくださっているのか?」

「そ…それはもう…!やさしくしていただいております」

「そうか。良好な関係であるのなら申し分ないな」


和葉の話を聞いて、にっこりと微笑む貴一。


和葉は驚いた。

自分に対するこんなに穏やかな貴一は、これまでに見たことがなかったから。


だからこそ、和葉はふと思ってしまった。