和葉にとっては、それがどうも“家族”として接しよう取り繕っているようにしか思えなくて、まったく落ち着かなかった。


そして、その違和感のわけがようやく判明する。


その日の夜更け。


寝る前に、明日の支度をする和葉。

それが終われば寝ようと思っていたが、なかなか寝つくことができなかった。


実家だというのに、ここはもう自分とは関わりのない場所。

そんな気がして落ち着かなかったのだ。


…コンコンッ


すると、和葉の部屋のドアがノックされる。


静まり帰った屋敷に響いた物音に、驚いてドアに視線を移す和葉。


使用人たちは夕食の後片付けをして、この時間はすでに帰ってしまっている。

ということは、黒百合家3人のうちの――だれか。


「は…、はい」


和葉はごくりとつばを呑み返事をした。