会食の途中で、一度席を立った貴一。

なにをしに行ったのかと和葉は思っていたが、あのときに呪術の文を飛ばしていたのだ。


しばらくすると夕食の時間だった。


使用人たちが丹精込めて作った料理が並べられている。


どれもおいしそうだが、今日は東雲家へ帰ることができなくなった和葉の気持ちは憂鬱で、まったく食欲がそそられなかった。


さらに驚いたことに、以前までは離れて座らされていたというのに、和葉の食事は乙葉の隣に用意されていたのだ。


久しぶりの実家。

そして、ただでさえ家族で濃い時間を過ごし気疲れしているというのに――。


本音としては、前のように3人から離れた席で、1人で静かな食事がしたかった。


食事時も、貴一や八重がやたらと和葉に話しかけてくる。

乙葉が嫉妬しない程度に。