乙葉が愛想笑いを浮かべながらも、腹の底では和葉に嫉妬心を燃やしていることは、同じ双子である和葉にとっては手に取るようにわかっていた。


「あ…あの、わたしの話はいいですから…」


声をかけるも、しばらくの間は和葉の話ばかりだった。


その帰り。


「お父様、どういうことなの!?わたくしの結納の場だというのに、お姉ちゃんの話ばかり!」


予想していたとおり、乙葉はひどく怒っていた。

狭い車の中で、乙葉の鋭い睨みが和葉に刺さる。


「仕方ないだろう。蛭間家も、神導位やその妻の和葉のことに興味をお持ちなのだから」

「だからって、なにもあんなに楽しそうに話さなくたっていいじゃない!」

「すまんすまん。べつに、楽しく話していたわけではない」

「そうよ、乙葉。これから蛭間家とはいい関係を築いていく必要があるのだから、お父様も相手方の話に合わせていただけよ」